イソップのメモ帳

イソップが見たり聞いたりして考えたことの記録

イソップの教室ー理科実践①生徒による実験考察の相互評価ー

相互評価による表現力の向上を目指して


今回は,理科教育 Advent Calendar 2019 - Adventar の記事となっております。

 以下の実践について書きます。
・中学校3年物理領域「物体の運動」

やったこと
[実験①平面において1度力が加わった物体の運動]

・説明
①目的確認:記録タイマーを用いて,上記の実験によって物体の運動を捉えることを伝える。
②事前確認:記録タイマーは1秒間に50打点するため,6打点間(1点目を0番目とする)のテープの長さを計測することで,0.1秒間の平均の速さを求めることができる。

・実験
①記録テープを1mで切る。
②記録テープを記録タイマーにセットする。
③記録タイマーを起動し,力学台車を一度だけ押す。

・処理
①記録テープに打点された点で,打点の区別が可能な点からカウントし始めて,6打点ごとに線を引く。
②6打点間の距離を測り,記録用紙に記録する。
③測定した距離をテープに記入し,切り離す。
④切り離したテープをグラフ用紙に,左詰めで貼り付ける。
⑤各テープの長さから各時間の速さを求め,記録用紙に記入する。

・考察
①グラフからわかることを記述する。
例:テープの長さは徐々に長くなり,0.3秒で以降は減少していく。

・相互評価
①班ごとにグラフ用紙をまとめ,別の班のグラフ用紙と交換する。
②自分の名前を記入し,グラフに書かれた考察について良い点,改善点を記入する。
③班の全員がコメント等を記入し終えたら,別の班と交換する。
④他の2班分のグラフ用紙にコメントをしたら,自分の班のグラフ用紙を回収する。

・振り返り
①回収したグラフ用紙のコメント等を読み,改善を要すると判断した場合は色ペンで考察を書きなおす。ただし,このとき最初に書いた考察は消さない。

前)テープの長さは徐々に長くなり,0.3秒で以降は減少していく。
後)テープの長さが徐々に長くなることから,最初は台車の速さが大きくなることがわかる。しかし,0.3秒以降テープが徐々に短くなることから,速さが小さくなることがわかる。これは力を加えたのが最初の1度のみであるため,摩擦力等によるものと考えられる。
②3観点で自己評価(1~5,理由)を記入する。
安全:安全に取り組むことができたか
確実:確実に結果を得ることができるように実験に取り組むことができたか
効率:効率的に実験を進行できるように実験に取り組むことができたか
③全体の振り返りをする。

 

[実験②斜面において力が加わり続けた物体の運動]
・説明
上に同じ

・実験
①記録テープを1mで切る。
②記録テープを記録タイマーにセットする。
③教科書や椅子等に板の片側を載せて,斜面をつくる。
④記録タイマーを起動し,斜面上に置いた力学台車から手を放す。

・処理
上に同じ

・考察
上に同じ

・相互評価
上に同じ

・振り返り
上に同じ

 

 実験①の考察では,結果を表面的に解釈・理解していた生徒が,相互評価を通じて結果の解釈・理解を深めた記述ができるようになっていた。
 成績上位の生徒の考察を書き写した可能性も少なくないが,教師の教授による知識・視点の獲得よりも,生徒の意欲を高めることができている感覚を受けた。この要因としては,自身が評価者という立場になる優越感・有能感が考えられる。

 実験②は,実験①で得た技能生かし,自己評価を考慮して実験に取り組み,評価の視点を踏まえた考察をすることができている生徒が多くなっていた。そのため,実験①よりも高評価を得た生徒が多く,考察を改善する生徒が少なくなった。
 実験①に対するリベンジとして,さらによりよい結果を得たい,グラフを作成したい,考察をしたいという気持ちで臨んだ生徒が多かったことが,振り返りからわかった。

 実験考察を相互評価する取り組みを取り入れることで,次の成果が得られると考えられる。
①他者の考察を読むことによる,他者の表現方法の認知
②評価者視点の獲得による,考察表現のセルフチェック
③評価者という役割になる優越感・有能感からくる学習意欲の向上

乱筆であり,得られた成果はあくまで個人的な所感の範疇だが,相互評価を取り入れたことによる実践交流をさせていただけると幸いである。